つくたま塾「まちづくりを支える仕組みをつくる」の報告

つくたま塾 2018年10月3日(水) 19:00~21:00の記録

◎講師:橘たかさん(合同会社橘、元二子玉川商店会理事、元玉川町会事務局長補佐、一般社団法人世田谷コミュニティ財団理事)

◎参加者:20名

◎場所:さいたま市生涯学習総合センター 9F・学習室2

◎タイトル:「まちづくりを支える仕組みをつくる」

今回のつくたま塾は「まちづくりを支える仕組みを作る」と題し、公務員出身で、最近、民間発のまちづくりファンドの立ち上げにも携わられた、橘たかさんに、お話を聞いた。

 

○橘さんのバックグラウンド

橘さんは、元々、上尾市の職員。行政の計画づくりの担当として業務に当たっていたが、同時に、市民参加のまちづくりを進めたいという思いから、市民の立場からまちづくりを考える「協まち研(協働による参加のまちづくり市民研究会)」での活動を始めた。こうした活動を行う中で、街中でのアクションからまちに関わる試みをやってみたいと考え、さまざまなまちの課題を話し合うではなく身体全体を使って考える「演劇ワークショップ」や興味がない人もまちを歩いていているときにうっかりまちづくりに触れてしまう機会をつくる「みちばた劇まつり」などの活動を埼玉県内で展開した。その後、もっと本格的に市民参加のまちづくりの手伝いをしたいと考えた橘さんは、市民参加の様々な場づくりを仕掛ける民間コンサルタントの立ち上げに参画。その後、自らも「合同会社橘」を立ち上げた。

 

○「お試し参加」でまちづくりのハードルを下げる

独立後、橘さんが請け負った仕事の一つが、二子玉川商店街の仕事。最初は、安全安心まちづくり担当の理事としてだったが、商店主や住民などさまざまな人と交わる中で、玉川町会の事務局長補佐など、役割は様々に変化している。

 

取り組み事例の一つが「お試し参加」の仕組み。町内会や市民活動団体のまちづくりや商店街などの活動は、外から見ると「何をしているかわからない」「活動への入り方が分からない」あるいは「一度参加したら辞められないのでは?」といった不安があると分析。そこで、「お試し参加」を基軸に、まちづくり活動の話を聞く「ゼミ」、お試し参加する「実習」、参加者どうして共有する「実習報告」、多くの人に参加の感想やまちづくりアイデアを伝える「発表会」など、ちょっとまちづくりに参加してみる「ちょいまち会」を設けた。これらにより、まちづくり活動を具体的にイメージできるようになる人が増えていった。

 

○「プラットホーム」で交流を活性、様々な芽生えに

橘さんがちょいまち会を実現できたのは、まちづくり活動のプラットホームとしての「二子玉川100年懇話会」があったからとのこと。玉川町会が中心となって、「100年先を見据えたまちづくり」を考えるという壮大な目的を持った会で、地域の関係団体や小学校、行政、警察、大型商業施設や鉄道事業者なども参加した。

プラットホームで繋がり、情報交換をすることで、まちに住んでいる人々が自ら企画し実践する様々なプロジェクトが生まれていった。まちの素敵を共有する「ものしりマップ」にはじまり、「震災対策マップ」、災害時にも役立つご近所での関係づくりをする「ご近所広場」、まちにもっと愛着が持てるようにするための「通りに名前を付けるプロジェクト」のほか、掲示版の再デザインなどもはじまった。この会で橘さんは事務局としてプラットホームを運営するほか、自らもプロジェクトを立ち上げ、これまでのまちづくり活動とまちづくりに関わりたい新住民とをつなぐ役割を果たした。

 

○まちづくりを併走しながら支援する「コミュニティ財団」の立ち上げ

二子玉川でさまざまな仕掛けをする橘さんが、力を入れているもう一つの活動が、コミュニティ財団の立ち上げだ。

世田谷区には、もともと、まちづくり団体を資金面から支える「公益信託世田谷まちづくりファンド」がある。その一つのプロジェクトとして、2013年にプロボノによる伴走型支援を伴う助成部門として、「キラ星応援コミュニティ部門」が立ち上げられた。ここでは、助成先に対して、活動の成長を後押しする伴走型支援を実施、複数年をかけて資金だけでなく団体活動の成長をサポートする仕組みを始めた。この仕組みを始めるに当たっては、当初から民間発のコミュニティ財団の設立をイメージしていた。この流れを受けて、設立されたのが橘さんも立ち上げに携わる「世田谷コミュニティ財団」となった。

まちの課題解決の担い手は、まちに住む人であり、自ら手を上げ行動する人。民から民へのお金の流れをつくり、地域に眠る人の力を活かし、まち全体に効果を波及する、そんな「生態系の始まりをつくることを目指した」と橘さんは語る。

このコミュニティ財団の資金は市民からの寄付のほか、今後は休眠預金や遺贈など、これから増えるであろう社会資産の有効活用にも取り組みながら、まちづくりを支える仕組みとしての発展を目指している。

 

一連の橘さんからのお話の後、橘さんの熱に押されたためか、会場での質問や議論は白熱した。長く続けるコツや人を巻き込むコツについては「助けて!教えて!と言うことが、コツ。繋がるきっかけにもなるので、おすすめ」と話した。また、当初の活動内容・目的が合わなかったときの対応について、「役割分担を呼びかけながら進めることが多い。分担すると別の方向に進むこともあるが、そうしたときは「何でこれを始めたのか」「何を実現したいと思っていたのか」を自らが問い原点を確認する『目的原理主義』であることが大切」と話した。

 

エネルギッシュに、さまざまなチャレンジを続ける橘さん。今後の活動にも、注目したい。

(文責:安部邦昭)

 

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