つくたま塾 2019年3月5日(水) 19:00~21:00の記録
◎講師:新津瞬さん(UDCO – アーバンデザインセンター大宮 デザインリサーチャー、cocojoco – ホリノウチ管理人)
◎参加者:16名
◎場所:まちラボおおみや(RAKUUN大宮 8階)
◎タイトル:「大宮駅周辺/周縁のパブリックライフデザイン」
現在、新津さんはアーバンデザインセンター大宮にデザインリサーチャーとして勤務する一方で、大宮駅東口から徒歩圏内にある戸建て賃貸住宅において、「住み開き」を行っている。
新津さんは自らのこうした取り組みを、大宮駅を起点とする「周辺」と「周縁」の空間構造として捉えている。
なお、この文章は、講義録ではなく、講義を受けた印象などを中心にまとめる。
●新津さんの「周辺と周縁」とは
・周辺:徒歩15分圏内。社会実験/制度的アプローチ。公共空間が舞台。住民や来街者が対象。
・周縁:徒歩15から30分圏内。できることからやってみる。タクティカルに進める。民有地が舞台。住民を対象。
〇アーバンデザインセンター大宮(UDCO)で大宮駅の周辺地域に働きかけている。
全国にアーバンデザインセンターが多数あるが、それぞれ独立体で、業務も経営形態も違う。ここアーバンデザインセンター大宮は、大宮駅を中心とする既成市街地を対象として2017年3月に発足し、同年10月には都市再生推進法人の指定を受けた。最近ではさいたま新都心を対象とするエリアマネジメント検討業務も行っている。
現在の仕事はさいたま市役所の業務委託がほとんどであり、経営の基盤になっている。協賛企業などを募りながら経営基盤を強化する試みを図っている。
新津さんは、早稲田大学大学院で都市計画を専攻し、イタリアにも留学経験がある。卒業後は、建築設計事務所に勤務し、秋田県能代市庁舎建築の設計・現場監理もした。そうした経験を踏まえて、役所と民間組織のあり方を考えて、UDCOに転職した。
●周辺地域で都市を使いやすくする社会実験に取り組んでいる。
UDCOが継続的に行っている事業としては、都市計画道路「氷川緑道西通線」の買収済み用地を活用する社会実験「おおみやストリートテラス」がある。この道路は氷川参道と旧中山道の間にあり、旧区役所と新区役所が面している。氷川緑道西通線沿いで、昨年度は南区間の一部、今年度は北区区間の一部で沿道のお店と一緒に、また、街中で商売をしたいという方々を募って仮設的な「ストリートテラス」を行った。統一したデザイン・ボキャブラリー、周辺への働きかけ、多彩なイベントなどの内容は次第にグレードアップしている。
また、大宮駅東口広場に面しているOM TERRACEでも社会実験イベントを実施している。
こうした実験効果を検証して、次につなげていくやり方は説得力がある。
UDCOは、市役所が取り組んでいる大宮駅グランドステーション化構想を具体化していくために、更に構想を計画へと深めていったり内容を練ったりして、住民たちとのワークショップを積み重ねていく事業に携わっている。
〇「cocojoco 大宮区堀の内町にある住宅をまちに開いた貸しスペース」で周縁地域に働きかけている。
cocojocoはイタリア語を参考にした造語で、それぞれが思い思いのことをする共同の居場所という。 3人の若者たちがそれぞれの目的を基にして、一緒に活動することに関心のある人たちに働きかけて、住まいを開く取り組みをしている。この周縁地域でライフスタイルの選択肢を増やす試みのようだ。それぞれで実践し、ノウハウを蓄積し、相互に影響を受けながら蓄えた知識経験を活かしていくことで、より豊かなパブリックライフを実現できないという問いかけをしている。
既存空間で障子の張替え、内装の改修なども知り合いなどに呼び掛けて参加型で行った。また、荒れた庭を整えて、家庭菜園も設けたり、バーベキューパーティを行った。身体をケアする「ヨガ&お灸・セルフケア教室」などの会場としても利用された。こうして周縁地域での新しいライフデザインに挑戦している。
●おわりに
新津さんには現在進行形のお話をしていただいたので話しにくかったと思う。質疑応答の場で、F氏が中川寛子氏が書かれた「東京格差」で使っている生産者住民と消費者住民を例にとっていたが、まさしく新津さんらは「まちに関わることでまちを面白くできるようなら自分たちも何かをしよう」という生産者住民の立場をとっているのだろう。 実際に住んでみた感想は、活動が広がっていくことの難しさを感じているようだが、是非、この周辺と周縁の空間を面白くしてほしい。
(文責:若林)