つくたま塾「オープンデータ/オープンガバメントで、市民参加のまちづくりはどう変わる?」の報告

つくたま塾 2017年9月26日(火) 19時~21時00分の記録

◎講師:庄司昌彦さん国際大学GLOCOM准教授・主任研究員。オープン・ナレッジ・ジャパン代表理事、インターネットユーザー協会(MIAU)理事、内閣官房IT室オープンデータ伝道師)

◎参加者:8名

◎場所:さいたま市生涯学習総合センター 学習室2
(シーノ大宮・センタービル9F)

◎タイトル:「オープンデータ/オープンガバメントで、市民参加のまちづくりはどう変わる?」

浮世絵:月岡芳年はオープンデータ(著作権が切れたもの)。

■オープンデータの定義

・オープンなライセンス(著作権)
・オープンなアクセス(入手方法)
・オープンな形式
→単に「公開されたデータ」ではなく、「開放資料」であること。(開放区・解放区)
→個人情報、機密情報は予め除外
→行政が作る、市民が作る、企業が作る

〇経済活性化・効率化
→Oil of the 21st Century:情報は社会的な資源
〇国民参加・官民協働
→Open by default
〇透明性・信頼性向上
→政治:民主主義の質を高める

*参考:総務省が定義するオープンデータとは
https://www.soumu.go.jp/menu_seisaku/ictseisaku/ictriyou/opendata/opendata01.html

〇「ラフコンセンサス」と「ランニングコード」

たとえば、チェコの聖ヴィート教会とシリアの市場を対比して、
●「伽藍」と「バザール」 (Eric Raymond)
・当初から綿密に設計して組み上げるもの→「伽藍」に対して、使いながら成長していくもの→「バザール」。これはインターネットの世界観・思想に通ずる。
最初から全てを設計するのではなく、完成度が低くてもオープンにして迅速に改良を加えながら成果を生み出していく。
・日本の行政が持っている無謬性の価値観とは対極にある。
・また、知識や情報が優位性の源泉という考え方に対して、ICTは協力し合えるための社会的基盤としてとらえる。

〇Stupid Network、インターネットの思想

インターネットにはシステム全体を制御するような中央集権的でインテリジェントな存在がない(いらない)。
ネットワークに繋がっている「端末」がインテリジェントになりイノベーションを起こす
・知識や情報は、権力やビジネス上の優位性の源泉になる。
・インターネットは誰かのものではなく協力し支えあう社会基盤。・wikipediaに代表される。

■地域社会の将来を考える 「人をつなぐ/つなぎ直しが必要」

・人口減・高齢化率の上昇の衰退の速度は変えられる(島根県海士町、徳島県上勝町)
→移住者などの社会増の実現によって、20世紀末の悲観的予測を覆した
・秋田県は99万人:全国38位が島根県68万人:全国46位を下回る可能性
→対策が効果を見せ始めた島根県と、衰退傾向が止まらない秋田県
・単独世帯が多数はとなり、より「個人」を単位とする社会が立ち現れる
→より個人が社会との関係を結ぶことが重要になる。

■使える資源は何か+オープン化の力

「ヒト」「モノ・場所」「カネ」「情報・データ」のうち、この先縮小しないのは「情報・データ」。

〇どのような地域が豊かなのか
プラットフォーム、インフラストラクチャの類のビジネスの可能性は、オープン化、低価格化を進めたものの、一部の企業による寡占傾向となったが、その基盤の上の小集団の活動は増加し、活性化している

●福島県会津若松市が参考になる
https://aizu.io/

・会津大学や自治体等との官民連携により、迅速な意志決定、低コストで取り組まれている。
・次々とチャレンジアイディアプロジェクトが立ちあがり成果を上げる→東京を経ずに世界に発信している。
・Code for AIZU を読み替えて、「行動 for 会津」、「オープンカフェ会津」としている。
例:市役所が除雪車GPSデータを作成し、公表。
・その他、注目しているのは、コペンハーゲンの実験的協同体ピッピ―自治区 エコビレッジ・コレクティブなど。地区名はクリスチャニア、スヴァンホルム。
・韓国ソウル特別市共有促進条例 情報を開放している。
世界初の、包括的なシェアリングコミュニティを目指す。

■最近の動きを振り返ると、

2009年米国オバマ政権 「透明性とオープンガバメントに関する覚書」
2011年東日本大震災 多数の自発的取組(電力、避難所、物資等)課題の露呈
2012年萌芽的取組 電子行政オープンデータ戦略 先進自治体(鯖江、横浜、千葉、会津若松)
2015 データカタログサイト
2016 官民データ活用推進基本法(議員提案)

・「官民データ活用推進基本法」→国と都道府県に基本計画策定義務、市町村に基本計画策定努力義務。埼玉県庁は積極的に取り組んできた。

■データにもとづくこと(先入観を疑う) 正確な情報をわかりやすく提供する。

・少年犯罪の実数は減っているのにもかかわらず、、、。内閣府の世論調査によると少年犯罪が増加していると回答する人が多い。つまり、正しい情報が伝わっていない。
→地域経済分析システムRESAS
●ICT・先進都市東京の取り組み他
例;犯罪予測システムの開発→梶田真実氏が開発したアプリ「女性のためのかわいい防犯アプリ」が凄い。犯罪予測アルゴリズムを開発した。
・駐輪場情報などのオープンデータ活用例が生まれてきている
・2020に向けて、「東京都が外国人向け観光アプリを作る」ではなく、「民間が自由にアプリ開発できるようにオープンデータを使いやすくします」という流れが正解か
・森川嘉一郎「趣都の誕生?萌える都市アキハバラ」 (幻冬舎文庫 マンガ)
・「税金はどこへ行った」 東京都(小池知事)は、1件ごとの公金支出情報の公開をはじめた。これからの成果が楽しみだ。
・国交省HPでは「オープンデータ」のタグがあり、情報の整理がされている。
・「全国水利台帳」(消火栓データベース)
・バルセロナ「センサー都市」、ロンドン「オープンデータ」London Data Store

*ミルモシリーズ 民間企業がケアマネの情報支援をする。
https://www.welmo.co.jp/service.html

■参加型民主主義の変容 モデル3を目指す

モデル1 声を届ける参加型民主主義(議員に声を届ける、議員を媒介にする)
モデル2 政治を直接動かす参加型民主主義(デモなどの直接行動による)
モデル3 自分たちで作る参加型民主主義

■民間の力で地域を運営するための財源確保の類型

1.資源の稼働率向上=シェアリングエコノミー
2.外部流出を止め地域内循環増=里山資本主義(藻谷浩介)
3.住民自ら配分を決め納得する=自治基本条例
4.節約して再投資+収入を増やす=稼ぐまち(木下斉)
5.共感や関係性で獲得=クラウドファンディング
6.金持ちが寄付をする=「地方豪族」(「ヤンキーの虎」「新・地方豪族」)

「新・地方豪族」とは日経ビジネスが提起した概念で、地方都市で多種多様のビジネスを手広く手がけている企業
●注目しているのは「地方豪族」の定義・特徴
→生活に密着した業種、コングロマリット、スピード感、フランチャイズ店舗の経営
☆地域生活に密着する企業が生活のあらゆる場面に入る loT・データ活用の担い手に
・地方経済の担い手としての新・地方豪族 全国各地でのプロサッカーリーグの担い手企業に見られる。
●どのような地域が豊かなのか。CODE for Japanが目指すこと
ソーシャルメディア/プラットフォームがあり、小集団の活動が増加し、活性化し、影響力が増大していく。

■質疑応答(抜粋)

質問・行政職員は情報の公開を怖がる傾向にあるが。
回答・心配のし過ぎではないか。かつて、埼玉県庁が「広報情報のオープンデータを発表したところ、おそらく上司の判断で公開の程度が著しく制限されて、NO/OPEN DATAとして炎上した。その後、直ぐにオープンになったので収まった。(2015年7月5日~13日)

質問:情報に対しては、高齢者と若者たちの意識や操作能力の差があると思うが。
回答:そんなことはない。先日も82歳のプログラマー若宮正子さんと一緒にシンポをしたが、いくつになっても自分を変えられることが素晴らしい。類は類を呼ぶということよりも、新しいつながりを作っていくことが大事だ。(文責:若林)

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