都市づくりNPOさいたまでは、2009年の市長選以来、市長選挙の度に、他のまちづくり団体と連携して、候補者のみなさんに公開質問を送付し、得られた回答をホームページ上で公開してきました。
これは、私たちが、さいたま市の自治に関心を持ち、地域で活動する市民活動団体であり、広く市民、企業、行政等との連携・協働のもとに、地域の自治とまちづくりに主体的、継続的に関わっていくことを目指し、2001年設立以来、活動を続けていること、そして、新たに選ばれる市長の率いる行政と、いかに協働してさいたま市のまちづくりに取り組んでいけるかについて深い関心を抱いているために実施しています。
今回の「さいたま市長選挙2025」にあたり、内部で検討を重ねた結果、公開質問の送付と回答の公開を行うこととなり、準備を進めてきました。
公開質問と回答の公開に当たっては、事前にさいたま市選挙管理委員会にも確認の上、以下の要領で実施しています。
送付した質問の内容は、次の通りです。
立候補者の回答状況は、以下の通りです。
| 候補者名(届出順) | 回答状況 |
|---|---|
| 加川義光氏 | 回答あり |
| 清水勇人氏 | 回答あり |
| 沢田良氏 | 未回答 |
| 小袋成彬氏 | 未回答 |
| 西内聡雄氏 | 未回答 |
各候補の回答内容は、以下の通りです。
※各質問への回答は200字程度でお願いしています。このため、公平を期すために、200字を超える分についてはアンダーラインを引かせて頂いています。
さいたま市の総合振興計画の基本理念には「市民と行政の協働」が謳われており、「さいたま市市民活動および協働の推進条例」も制定されています。しかしながら、市民同士の協働は活発化しているものの、行政と市民の協働は限定的と言わざるを得ません。
行財政改革で福祉施設の削減を職員が積極的に提案する現状がある。また人件費をコストとみなして非正規職員や委託を不必要に増やしている。自体本来の仕事である住民福祉の増進を基本にすえ、全体の奉仕者として働く姿勢を職員には第一にもってもらいたい。
一職員一改善提案制度の定着による改善意識の向上、テレワークなど多様な働き方が選択できる職場環境の整備により、年間15,000 件を超える事務改善が行われていることや、働きがいを感じている職員の割合・ワークライフバランスを感じている職員の割合についても、ともに70% を超えております。
今後も、現在の取組の継続・発展により職員・組織をシンカさせることを通じて、市民の皆様・職員の満足度をシンカさせてまいります。
住民に身近な存在である区の権限と職員体制を強化し、住民共同のまちづくりに積極的にかかわれるようにすることが必要です。同時に、本市の「総合振興計画」の中心である「2都心4副都心構想」による局地的開発の考え方のままでは各行政区で住民との共同に視点を置いた行政は難しいものと考えます。同計画の見直しが必要です。
地域単位のエリアマネジメントについては、市民、市民活動団体、大学及び事業者など様々なセクターとともに、相互の特性や強みを尊重しつつ、連携を図り協力して取り組むことが重要であると認識しております。
推進体制においては、市民や市民活動団体及び事業者の代表者など幅広い分野の委員により「市民活動推進委員会」設置しております。
また、協働の取組を増やすためのマッチングファンド助成事業や市民活動サポートセンターにおいて市民活動を支援し活性化を図っております。
都市開発を進めている地域では住民と行政の共同に一定の役割を果たしているとは思いますが、どの地域でもつくるには大掛かりすぎます。開発ありきの行政そのものを見直すことを目指している以上、役割は限定的なものしか果たせないと考えます。
■アーバンデザインセンターおおみやについて
( 一社)アーバンデザインセンター大宮「UDCO」は、産・学・官・民が一体のプラットフォームとなり、大宮らしいまちづくりを進めるために設立され、平成2 9 年1 0月に「都市再生法人」に指定しています。
これまで、市内初の特例道路占用制度を活用した地域による公共空間の利活用や、参加型市民交流会の開催などの活動により、地域と行政をつなぐ、まちづくりの新たな担い手として、一定の成果が出ているものと評価しています。
今後も、大宮の新たな時代への発展に向け、本市としても支援を行いながら、自立化、協働体制の定着を目指していきます。
■アーバンデザインセンターみそのについて
アーバンデザインセンターみそのは、本市も参画し、「公民+学」の連携により主にソフト分野の企画調整・事業化を行う「美園タウンマネジメント協会」の活動拠点になっています。
同協会での活動として、青空市などの開催による地域コミュニティ醸成や、モビリティシェアリングの運営などによる地域住民の生活の質の向上が図れたことにより、美園エリアの価値向上に寄与しているものと考えており、域内人口の増加も続いているところです。
今後も、同協会において実施される住民のニーズを満たす活動を支援してまいります。
さいたま市における自治基本条例の制定については、平成22年4月から24年2月までにわたって「さいたま市自治基本条例検討委員会」による精力的な検討が行われ、報告書が提出されています。しかしその後、行政、議会においても何らの検討もされずに放置されています。
私たちは、市民と行政、議会がさいたま市の自治の基本理念を共有するとともに、様々な場面でまちづくりに取り組む際の指針として、何らかの条例や憲章などが必要であり、これを市長のリーダーシップのもとに、実現してほしいと考えています。
必要と考えます。
自治基本条例は、市民と行政が地域や市の課題をともに考え、ともに取り組んでいくため、自治に関する基本的な理念や市政運営の基本的事項等を定める重要なものであります。
一方で、現時点において平成2 4 年2 月に検討委員会でとりまとめられた条例素案に盛り込まれた事項の多くが既存の条例によって具現化されていることや、市民憲章が制定されたことなどにより、ただちに条例制定に向けた検討を再開する状況では無いと考えています。
加川候補
市民の声が生かされないまま公共施設の廃止や建設が進められている現状を考えれば、住民自治を明確にした内容にすべきです。同時に、議会基本条例がすでに制定されており、内容について整合性がとられるようにしたいとかんがえます。
清水候補
自治基本条例は、制定に向けた検討を開始した当時、行政サービスの質を維持し、市民がしあわせを実感し、絆で結ばれたさいたま市を築いていくために、行政だけでなく、市民参加と協働の取組を推進していくためのルールを定めるものと考えていました。
今現在もその基本的な考えに変わりはなく、市民のだれもがさいたま市らしさに誇りをもち、自分らしく暮らせる社会をつくるために、まちづくりに参画していただけるような条例がふさわしいと考えています。
さいたま市には、10の行政区が設置されています。東京の23区とは位置づけが異なりますが、「さいたま市区における総合行政の推進に関する規則」における区役所の役割にも、「3.市民参加による地域の個性を生かしたまちづくりの拠点」と位置付けられています。
しかし、政令指定都市化から22年経った現在、区で行っていることは窓口サービスが中心であり、長年続いていた「区民会議」も廃止されてしまいました。
住民の要望や願いを積極的に汲み上げ、住民と共同してソフト・ハードともにまちづくりをすすめることが大事と考えます。
本市は、平成15 年に政令指定都市となり、質の高いきめ細やかな行政サービスが提供できるよう9区に区役所を設置し、その後、平成17 年に旧岩槻市と合併し10 区による区制を施行しました。
区役所は、区における地域的課題に対応するため必要と認める施策の実施に向けて、区民の要望、意見、提案等を積極的に把握し、区の行政に反映させるよう努めるとともに、庁内横断的な情報共有・連携を進めることで、魅力あるまちづくりに繋がるものと考えます。
区の権限が限られているなかで、せっかくの積極的な市民提案や要望が生かされてこなかった点に問題がある。区の権限(財政含め)を強化することと一体に区民が主体的にかかわれる場を設置したい。
「区民会議」は平成1 5 年度から、行政区において区の特徴や特性を生かしたまちづくりを進めるため、区民の意見を区行政に反映させるために設置され、その意見が事業化されたものもあり、区のまちづくりについて一定の効果があったものと考えます。
令和元年度には、各区において区民会議以外に区民の意見を聞く取り組みが独自に実施されている状況を踏まえ、区民会議の見直しを実施しました。
現在は、区民会議に代わる広聴機能として、各区がそれぞれ工夫しながら意見交換会、ワークショップ、アンケート調査などを実施しているところです。
近年、まちづくりで「公民連携」の体制が取られることが多くなりましたが、ほとんどのケースで経済性や公契約のルールが重視されて営利企業がパートナーに選ばれ、結果としてまちづくりへの市民参加が十分ではないと感じます。公共事業・プロジェクトにおける公民連携については、整備に民間資金を活用するだけでなく、市民セクター・非営利セクター、大学等の参加により、公正で多様な市民のためになる事業を進めるべきと考えます。
今の公民連携は民間企業奉仕に市民の税金を使い、公共の役割を放棄する方便になっている。地方自治の主体である住民との共同を進めたい。
少子高齢化の進展などにより、財政状況が厳しくなる一方で、多様化・複雑化する行政課題に柔軟に対応するため、様々な公民連携手法を活用することにより、行政コストの削減を図りながら、質の高い公共サービスを提供していく必要があります。
民間事業者等からの提案による事業の推進や包括連携協定の締結、効率的な公共施設等の整備・運営、指定管理者制度によるサービス向上など、多様な主体とともに公民連携を推進してまいります。
さいたま市では、「さいたま市文化芸術都市創造条例」に基づくまちづくり施策を実施してきました。私たちは、さいたま国際芸術祭の過去3回の開催やアーツカウンシルさいたまの創設などこれまでの取り組みを評価するとともに、今後の展開に注目しています。
国際芸術祭のない年は文化芸術予算が政令市中最下位レベル(人口比)である。文化芸術予算を抜本的に増額する。特に国際芸術祭費用の大部分を占める国際的なアーティストへの委嘱費を削減し、市民の文化芸術活動に振り向け、市民中心の芸術祭に改める。
また市内文化財保護が遅れている現状を直視し、調査と保護活動を強化する。
本市では「生き生きと心豊かに暮らせる文化芸術都市」を創造するため、条例や計画に基づき、各種施策を実施しております。
過去3 回開催した国際芸術祭は、市民参加型の芸術祭として多くの方々に参画いただき、直近の2 0 2 3 年の開催では参加者数が4 9 0,8 2 0 人と過去最多を記録しました。また、令和4 年1 0 月には文化芸術に関する専門の支援組織として、「アーツカウンシルさいたま」を設置しました。
今後も、市民等による文化芸術活動を持続・発展させ、日頃から文化芸術に親しめるような環境づくりを進めることにより、文化芸術を通じたシビックプライド醸成や、地域コミュニティの促進に寄与する取組を推進してまいります。
生物多様性の保全と回復については、2030年までに自然環境の減少を食い止め、回復軌道に乗せる「ネイチャーポジティブ」が世界的な約束となっており日本はこれをリードしています。
ネイチャーポジティブの実現には、現存する当たり前の自然環境をできるだけ保全・再生することが重要です。現在、首都高速さいたま新都心線の延伸や与野中央公園におけるアリーナ建設などの開発等に伴う、自然環境の減少も懸念しています。
開発や商業利用が優先になって緑地が減少の一途をたどっており、開発優先のまちづくりの考え方を改める必要がある。いまある緑地を保全し増やすことを目標を持って取り組む必要がある。
総合振興計画の将来都市像の「上質な生活都市」や重点戦略に、見沼田圃をはじめとする豊かな自然環境の保全と水と緑に囲まれた都市生活の実現を掲げ、各局において環境保全や環境に配慮した事業に取り組んでまいりました。
ネイチャーポジティブについては、国家戦略の策定や新法の施行など、急速に枠組みの構築が進められる中、本市においても2 か所の自然共生サイト認定を受けるなど、先行的な取り組みを実施しているところです。
今後は、ネイチャーポジティブ実現に向けた世界目標である30by30目標の達成に、本市として可能な限り貢献するため、市内の健全な生態系の回復に向けた保全エリアの拡大や、市民、企業など多様な主体者の参加促進などの新たな施策を展開いたします。
緑地や農地を大規模に使った公共施設整備や企業誘致活動は最小限にすべきと考える。また市による緑地の保全・買取を強化する。
大規模な開発事業や高層建築物の建築にあたっては、既存の自然環境の保全はもとより、その事業と環境影響の関係や環境保全に関する施策の内容を整理し、地域固有の生態系の再生や新たな生態系の創造などに取組むことが重要と考えております。
これまで本市の公共事業においては、環境影響評価条例に基づく手続き、生活環境保全条例に規定する建築物環境配慮計画の作成、地球温暖化対策実行計画に基づく環境配慮型公共施設整備方針の事前協議のほか、グリーン購入や次世代自動車の普及など、様々な環境保全及び環境負荷低減に取組み、持続可能な経済、社会の発展に貢献してまいりました。
今後も、ネイチャーポジティブの実現に向け、公共事業全般における環境配慮の取組みを進めていきたいと考えています。
近年、特に都市や近郊の農地は、食糧生産の場としての機能のみならず、自然環境の保全や治水・水源涵養機能、ヒートアイランドの抑制、市民の憩いやさまざまな体験の場など、多面的な機能をもつ「農的な空間」として一層注目されています。
さいたま市は歴史的に農業が盛んで、現在でも全国の政令市の中で特に農業が盛んな地域です。市街地と農地が隣り合う風景はさいたま市の特徴でもあります。しかし、生産緑地から特定生産緑地へと移行した2022年には、農地の1割強が継続を断念し宅地化の道を選択しました。また、農業従事者の高齢化が顕著で農家数の急減が見込まれており、農業や農地を維持するためには新たな担い手の育成が急務と考えます。
農業者も農地も減り続けている。国の農政があまりにもひどい。さいたま市も新規就農者への支援が貧弱に過ぎるなど農業を軽視する国の姿勢がさいたま市にも引き写されている。
さいたま市には、見沼田圃や、荒川、綾瀬川、元荒川流域に広がる豊かな水田地帯を中心に優良農地が確保され、県内有数の農地面積を誇っています。
また、首都圏という大消費地に立地していることから、米、野菜、花きなどの生産が活発に行われています。
一方で、農家の高齢化、担い手の不足、農地の減少などが進んでおり、農業を取り巻く環境は一層厳しさを増しています。
こうした現状を踏まえ、農と都市の共存を図り、都市農業の持続的な発展が可能なまちづくりを推進する必要があると考えています。
農地が減少の一途をたどっている現状を変えなければ多面的な機能云々の議論すら成り立たないところまできている。さいたま市の農業は経済局が所管しているのだから農業を基幹産業の一つと位置づけ、農業者支援を強める必要があり、財政面でも増やす。国に対しても農業軽視の姿勢を改めるよう意見をしたい。
都市化が進展するさいたま市において、都市農業・農地の持つ多面的な機能は、良好な景観の形成、環境の保全、防災、交流の場の提供など様々な役割を果たしていると考えています。
農と都市の共存を図り、多面的な機能が将来にわたり持続的に発揮されるようにするためには、市民と農業者との交流等を通じ、市民の農に対する理解と関心を深める取組や、地域ぐるみで農地や用水路を保全管理する活動への支援などが必要と考えています。